テレビや新聞を未だに賑わす事の多い振り込み詐欺ですが、実際に振り込み詐欺の電話をかけたり騙されてしまった被害者のお金の出金行為に携わっていなくても罪にあたる行為があるのをみなさんはご存じでしょうか。
それは何かというと「口座の売買」です。
自分自身の口座を売っただけで、なぜ罪に問われるのか?と不思議に感じる方もいると思うので現役郵便局員である、たぬおじが分かりやすく説明をしていきます。
口座の売買に関してはこのような罪に問われます
詐欺罪については一般的にも耳にしやすい犯罪かもしれませんが、犯罪収益移転防止法というのは金融機関等に勤めていないとなかなか耳にすることはないかと思います。
どういった行為がそれぞれの罪名にあたるのか、またどのような罰則が設けられているかというと下図のようになります。
また、当たり前ですが騙されてしまった被害者の口座に対して出金行為を行った場合も窃盗罪に問われます。
罪名 | 行為 | 罰則 |
---|---|---|
詐欺罪 | 他人に口座を譲り渡す目的で口座を開設する。または他人や架空名義の口座を開設する。 | 10年以下の懲役 |
犯罪収益移転防止法違反 | 自分や他人名義の口座を譲り渡す行為 | 1年以下の懲役、もしくは100万円以下の罰金、または両方 |
テレビで報道されている内容を見ると、口座の売買で得られる金額ってせいぜい数万円程度。
倫理的にもやってはいけない事はもちろんですが、わずかその数万円程度のお金を得るために、懲役刑を科されたり100万円の罰金を払うリスクを背負うのは見合っているとは思えません。
実は逮捕されるだけでは済まない
やってはいけない口座売買。
しかし実際に口座を秘密裏に売買して、その後逮捕される人が多数います。
その方達は逮捕後に裁判を経て懲役刑や罰金刑を科され、その罰則を終えればその後は普通に暮らせると思いがちですが実は違います。
まず、その方達の口座についてですがその売買した口座は凍結されます。
実際に犯罪に悪用された場合は凍結後、強制解約手続きに移り被害者への財産被害を回復するために分配金として充てられます。
しかもそこで終わりではなく、警察庁が管理する「凍結口座名義人リスト」に名義人の氏名や生年月日や住所や犯罪歴が登録されます。
そしてそのリストは全国銀行協会に共有されます。
つまり、売買した口座以外も凍結されてしまう可能性があるのです。
更にそのリストから削除されるためにはかなりの時間と労力を必要とする上に、リストから削除されたらすぐに口座が利用再開できるわけでもないのです。
直近でも実際に下図のように口座が凍結され強制解約されており、ご覧の通り年々その件数は増加傾向にあります。
利用停止 | 強制解約 | 合計 | |
---|---|---|---|
2018年度 | 40,193 | 18,694 | 42,829 |
2019年度 | 41,897 | 20,069 | 44,731 |
2020年度 | 42,982 | 21,089 | 45,915 |
2021年度 | 52,242 | 24,705 | 54,377 |
2022年4月~9月 | 33,474 | 13,932 | 34,318 |
強制解約手続きが始まった口座は名義人から権利行使を受け付けるために公告を実施
引用元:預金保険機構 https://furikomesagi.dic.go.jp/
新しい口座も作れない
先ほど触れた「凍結口座名義人リスト」に載ると売買した口座や利用中の口座についても影響が出る可能性をお話ししましたが、それならば新しい口座を作ればいいと思う方もいるでしょう。
しかし、「凍結口座名義人リスト」に載ると新規口座開設についても弊害が出ます。
実際にたぬおじが対応した方で、書類上は口座が開設できるので手続きを進めたところエラーが出力され、問い合わせをした結果、「リストに記載されているので新規口座はお断りしております」との返答をいただいたことがあります。
来店者には詳細は話せないので丁寧に口座開設が出来ない旨をお話し、なんとか納得いただきました。
口座が作れない影響
利用していた口座は凍結され、新しい口座開設も出来ない。
今の時代、給与の受け取りを現金支給にしている所なんてほとんどないでしょう。
罪を償い新しい人生を歩もうとしても、働き口の面接で「諸事情があって給与受取の口座は作れないんです」なんて話したら、少しでもトラブルやリスクを減らしたい企業側からしたら雇おうと意欲的に思って貰えるでしょうか。
一時の気の迷いや、ちょっとしたお小遣い稼ぎでその後の人生に多大な悪影響が及んでしまうのです。
口座売買はぜったいダメ!
「口座の売買」の危険性やその後の影響と解説しましたが、いかがでしたでしょうか。
思った以上に悪影響が大きいと思いませんか?
インターネットやSNS等で口座売買についての情報に触れる事もあるでしょう。
しかし、安易な気持ちでやったことが残りの人生を全て台無しにすることもありえるのです。
また売買された口座は必ず悪用され、そしてそこには被害者がいるのです。
こういった事に関わらないで済むように計画的にお金を使っていきましょう。
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